親の病気と介護に直面したとき、どう備えるべきか?
〜「万一の時」に慌てないための準備〜
ある日突然、家族の状況が一変することは珍しくありません。例えば、母が末期がんと診断され、同時に父の認知症が発覚する――。それまで大きな病気をしたことがなかった両親が、急に介護や医療を必要とする状況になることは、誰にでも起こり得る話です。
こうした事態に直面したとき、多くの人が最初に抱えるのが「お金」の問題です。特に、認知症の親を介護施設に入れる場合、その費用をどう確保するのかは大きな課題となります。実家を売るべきか、預貯金をどう管理すべきか、親が加入している保険はあるのか――。あらかじめ準備をしていないと、いざというときにスムーズに対応できず、精神的にも金銭的にも大きな負担を抱えることになります。
1. 親の介護費用はどうする?
有料老人ホームや介護施設の費用は、入居する施設の種類によって大きく異なります。例えば、民間の有料老人ホームの場合、入居時に数百万円以上の一時金が必要なケースもあります。また、月々の費用も施設によって違い、一般的には10万〜30万円ほどかかることが多いです。
こうした費用をどう捻出するのか、早めに考えておくことが重要です。親の年金や預貯金で賄えるのか、不足分は家族が補うのか、それとも実家を売却して費用に充てるのか――。状況によって選択肢は変わりますが、いずれにせよ事前に話し合っておくことが必要です。
2. 実家を売る?それとも維持する?
親が施設に入ると、実家が空き家になるケースが多くなります。その際、実家を売却するか、維持するかは大きな判断ポイントです。
売却する場合
- 売却資金を介護費用に充てられる
- 固定資産税や維持費が不要になる
- 使わない家を放置せずに済む
維持する場合
- 将来的に子どもや孫が住む可能性を残せる
- 親が退去後も「帰れる場所」がある安心感を持てる
- 賃貸や短期貸しとして活用できる可能性がある
ただし、家の名義が親のままだと、認知症が進んだ場合に売却や活用が難しくなることがあります。親が元気なうちに、誰の名義にしておくか、どう管理するかを決めておくことが大切です。
3. 親の預貯金や定期預金は?
親がどれくらいの預貯金を持っているかを把握しているでしょうか?また、定期預金がある場合、親が認知症になった後では簡単に引き出せなくなる可能性があります。
一般的に、認知症が進行すると銀行口座が凍結されることがあり、手続きなしにはお金を引き出せなくなるケースもあります。そうなると、親の医療費や介護費用を支払うのが難しくなるため、事前に口座管理の方法を決めておくことが重要です。
準備しておくべきこと
- どの銀行に口座があるのかを把握する
- 通帳や印鑑、キャッシュカードの保管場所を確認
- 信頼できる家族が代理で管理できるよう委任手続きをする
- 成年後見制度の活用を検討する
4. 親が加入している保険は?
親がどのような生命保険や医療保険に加入しているかを確認しておくことも重要です。特に、終身保険や介護保険などがある場合、それを活用することで介護費用の負担を軽減できることがあります。
確認すべきポイント
- どの保険会社のどのプランに加入しているのか?
- 保障内容は?(介護保障・死亡保障など)
- 解約した場合の返戻金はあるか?
- 受取人は誰になっているか?
これらの情報を整理しておくことで、万一の際にスムーズに手続きを進めることができます。
5. 「万一の時」に備えて今すぐできること
両親が元気なうちに、将来に備えて準備を進めておくことが何よりも大切です。
- 親とオープンに話す:「お金の話はしにくい」と感じるかもしれませんが、後で困るのは家族全員です。できるだけ早いうちに、親と資産や介護に関する話し合いをしましょう。
- 必要な書類を整理する:預金通帳や保険証書、不動産の登記情報などを一覧にしておくと、いざというときに役立ちます。
- 名義や相続を考える:親の名義のままだと手続きが難しくなる可能性があるため、どの資産をどう管理するかを検討しましょう。
- 家族で役割分担を決める:介護や金銭管理を誰が担当するのかを明確にしておくと、負担が偏ることを防げます。
まとめ
親の介護や病気は、突然訪れるものです。お金の管理、実家の活用、保険の確認など、事前に準備をしておくことで、いざというときに慌てずに対応できます。
「もっと早く準備しておけばよかった」と後悔しないためにも、今できることから始めてみてはいかがでしょうか?